高橋洋「恐怖」
○メインブログ「ミルクたっぷりの酒」に
2011年6月15日公開したものを転載
数週間前、ネットでこの映画のことを知る。
片平なぎさ演じる母親が娘の脳を手術するという楳図かずおの「洗礼」に似た設定の作品とのこと。
興味があったのでDVDを借りてみた。
観ながら一番に感じたことは、ホラーというよりはSFよりの作品で興業成績はどうだったのかということ。
観客を怖がらせることはまったく意識せず、興業成績などは無視して作りたいものを作ったという印象。
自分は観客を怖がらせることを目的としたお化け屋敷映画にはまったく興味がなく、この「恐怖」のような作品の方が好みだが、さして話題にもならなかったみたいだから興業的には成功しなかったのかもしれない。
けっこう楽しめたが、一回観ただけでは解釈に苦しむ。
劇中描かれていたのは、自殺した姉が死の間際に体験したことで夢オチの一種なのかなとも思えるが、ネット検索したら監督・脚本の高橋洋が「十人中七人は夢オチだと思うだろう。」と語っていたそうなので、ただの夢オチ作品ではないらしい。
「作品内の現実世界」がどうなっていたのかが気になる。姉妹の父が自殺したのは事実らしいが、母(片平なぎさ)は生きていて外科医をやっているのか。
姉妹の両親が脳の実験をしていたのは(作品内の)事実なのか。
描かれていたのは、どこまでが(作品内の)事実であり、どこからが幻想(あるいは姉または妹の見ていた世界)なのか。
2ちゃんなどでは「パラレルワールド(並行世界)」という意見があったが、そう解釈した方が自然かもしれない。
緻密に計算して脚本が書かれていたのか、それともけっこう大雑把だったのかも含め、注意して観直してみないと作品世界の構造がどうなっているのかよくわからない作品だった。
姉役の中村ゆり、朝ドラで見たような気がしたので調べてみたら、今やっている「おひさま」に出演していた。
悦子(片平なぎさ)の助手役の人(多分長宗我部陽子)は声と雰囲気が浅野温子に似ていた。
吉野公佳の役より出番が多く重要な役だったが、キャストの順番が吉野公佳より下にあったのは知名度の差か?
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「恐怖」の構成分析
構造・構成が複雑すぎてよくわからなかったので、構成を簡略化してみた。
<1>過去-悦子と行雄(みゆき、かおりの父)が脳実験のフィルムをみている。
みゆき・かおり姉妹もフィルムを見てしまう。
<2>6月23日(火):みゆきの部屋-かおり
かおりのセリフ(「姉に電話をしなければ」)の後、携帯電話が鳴り場面転換。
<3>病院(又は研究所)-みゆき、悦子(片平なぎさ)と助手たち。
<タイトルバック>
<4>集団自殺のシーン-みゆき、和志、拓己、理恵子。服部
<5>自殺した4人を連行する悦子と助手たち。
病院(研究所)での脳実験 ~ 脱走するみゆきと理恵子
<6>・作品中のメインとなる部分
姉を探すかおりのシーン 7月1日(水) ~ かおりと悦子の出会い ~ かおりとみゆきの接触
メインとなるストーリーが展開する。
終盤:悦子が光に喰われる ~ 森の中を歩くみゆきとかおり。みゆきの絶叫。
<7>自殺した4人と服部を車から運び出す警察
<8>喪服姿?のかおり。盛塩
2ちゃんとかにあったパラレルワールド説をとれば、<4>の集団自殺の後、<5>から<6>へと続く世界と、<7>から<8>へと続く世界があったということか?
<7>での服部の頭が割られているシーンは解読のためのヒントになっていそう。
<2>のシーンは、<6>の中のセリフ「夢でみた場面」のことか?
<3>は、<5>の中に組み込まれるのか?。<5>とは別の世界?。演出上のミスか?
<6>の中で、みゆきがかおりに「私たちはもう......」と話し、それを聞いたかおりが倒れ込むシーンがあった。
「私たちはもう死んでいる。」と言ったのか?。かおりも本当は死んでいるのか?
<6>の終盤、かおりが「姉さんも母さんも、もうとっくにあいつらに喰われていたの。」と喋っていた。一種の比喩か、それとも悦子も既に死んでいるのか。
片平なぎさの役名は太田ではなく、間宮悦子だが、夫が死んだ後、旧姓に戻したのか?それとも事実婚で籍はいれなかったのか?
悦子とみゆき・かおり姉妹は実は親子ではなく、姉妹が親子だと思い込んでいたのか?
監督・脚本の高橋洋の中では整合性のとれた説明があり、各場面を丁寧に読みこんでいけば作者の考えていた世界を理解できるように作られているのか?
ところどころ意味深なセリフや描写が見受けられる。
それともどのようにでも解釈できる曖昧な設定なのだろうか?
面倒くさいので、あとで気が向いたら再解釈を試みよう。
[追記]2011年6月20日
<2>のシーンは<7><8>と同じパラレルワールドかもしれない。(かおりが黒い服を着ている。)
また、服部の夢のシーンで、車のバックミラーに自殺した4人の姿が映っていたものがあったが、このシーンもパラレルワールドの描写かもしれない。(パラレルワールドの出来事を夢でみているという設定になっている可能性もある。)