映画版「SPEC」

「劇場版SPEC~天~」 監督:堤幸彦

テレビ版で小出しにされていた「御前会議」「シンプルプラン」「ファティマ第三の予言」、これらの設定や小道具を活かして、どんな本格的なSF作品が展開されるのかと期待していたが拍子抜けもいいとこだった。

メインストーリーは主人公側と敵のスペックホルダーとの対決を描くだけであり、前述の様々な設定や小道具はたんなるギミックにすぎず、これらを活かしたストーリーなどは脚本家や監督の頭の中には無いということが判明した。

起承転結の「転」にあたる部分がこの内容だと、「結」にあたる最終版も期待はできないな、と思っていたが実際にそのとおりになった。

(ただし劇場版のラスト作を観たあとだと、「天」は連続ドラマ版や特別編の「翔」には及ばないが、まだなんとか観られる内容にはなっていた。)


「劇場版SPEC~結~」漸ノ篇・爻ノ篇  監督:堤幸彦

まったく期待はしていなかったが、テレビドラマ版の「SPEC」が珍しく嵌まった日本のテレビドラマだったので、死に水を取るつもりで劇場に足をはこんだ。

前編、後編とも予想通りのグダグダ作だった。

「天」は期待が高かったために期待外れ感も大きかったが、こちらは期待していなかったので、やっぱりこんなもんだったかという醒めたきもちで観終えることができた。

特に後編は、帰り際、高校生が「中二病だな。」とつぶやいていたが、この一言にすべて集約されている。


ケイゾク」の映画版もそうだったが、脚本の西荻弓絵、監督の堤幸彦ともにセンス・オブ・ワンダーの持ち主とはいえないから、魅力的な世界観をつくることには長けていても、SFなどの本格的な虚構作品(フィクション)をつくるのには向いていない。

作中に謎を散りばめて、どんな展開になるのかと期待させる力は素晴らしいが、散りばめた謎を軸にした骨太のストーリイテリングと謎の回収・伏線の回収を行わない(行えない?)ため、肩透かし・期待外れ感が大きく、テレビ版のファンの不興を買うことになる。